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 「こだわりの哲学」を持った男② 

インタビュー・エッセイ 山際淳司


■野望


「秋山にこれほど早くおいついてしまうとは思っていなかった。もう少し時間がかかると思っていたんだ。向こうのペースが一度落ちてくれたからね。プレッシャーがかかるところなんだろうね。あれだけ打つと相手ピッチャーも厳しい攻め方をしてくる。いつまでも打たれるばかりじゃやってられないからね。インサイドにも厳しい球が来るし、そこをどう乗り切るかが秋山にとっては課題だと思うよ。それにトップに立つと精神的にもきつくなる。追うほうがラクなんだ」

―追いつくのが早すぎたんじゃないかな。今度は自分のほうにプレッシャーがかかってしまう。

「それは何度も経験していることだからね。それに考え方が変わってきた。ライバルと言う形で人を相手にしなくなったんだ」

―どういうこと?

「例えば誰かが3割5分を打つとする。すると自分は3割5分1厘を打たなければと思っていた。ライバルに勝つということはそういうことだね。4割を打つバッターがほかにいたら、オレは4割1厘を打つ。そう考えていたんだ。相手よりも少しでも上回れば勝てる。今年はどうもちがうんだ。結局は自分とのたたかいになる。誰かに勝つというんじゃなく、自分が設定した数字に勝とうとしている。つまり、自分と、そして数字とたたかっている」

―打率は?

「4割。不可能じゃない。げんにアメリカでは過去に4割バッターが出現しているんだからね。それにおれはシーズンの後半に強い。4割以上のペースで打つことは可能だと思う。今が3割6分台でも、これを4割にのせることができる」

―打点は?

「130をこえるだろうね。これはヒットが出たり、ホームランが出たりしているうちにおのずと増えていくわけだから、もっと増えるかもしれない。150とかね。あらためて目標を置かなくても数字はどんどんと伸びていくよ」

―ホームランは?

「45本をこえる。そういうレベルの争いになるんじゃないかと思う」


落合の頭の中にある数字とは、そういうレベルのものだという。

仮に、それに近い成績を残せば文句なしに三冠王ということになるだろう。二度目の、三冠王である。

「それくらいやらないと、借金を返せないよ」

笑いながら彼は言った。昨シーズンのオフ、落合は結婚して新居を構えた。1億5千万円の豪邸だという。それをすべて借金でまかなった。
これからは18年にわたって毎月150万円也を返済していくのだという。それも大変なことだ。

タイトルを一つでも多く獲れば、それだけ年俸も上がる。その他の収入も増える。18年もかからずに、もっと短い期間で返済できることになるだろう。そのために、頑張るのだという面はたしかにある。

が、それだけではない。

カネはたしかに格好の目標になるのだが、それだけでは馬力にならない。それとは別のモメントが必要になる。

繰り返し書くが、落合は三冠王になった。三度、首位打者になった。パリーグのみならず日本のプロ野球を代表するバッターにもなった。このペースで行けばそれなりの評価を受ける。

しかし、それだけではまだ満足できないのだ。

例えば三冠王にしてみても、一度もとったことのない人間にとっては大きな目標だが、一度手にしてしまうと、どれほど偉大なものであっても色あせてしまう。首位打者のタイトルにしても同様だ。感激は徐々にうすれていく。一度、頂点に立った人間は、さらにその上の頂点を目指さなければならなくなってくる。どこまでいっても満足ということがない。きりがなくなってくるのだ。

そういうところに、落合はさしかかっている。

落合夫人の信子さんがおもしろいことを言った。

「野球のことはあまり詳しく知らなかったですね。最初に三冠王をとった年の正月だったと思うんですけど、彼が三冠王をとると言い出したんです。それがどれだけ大変なことか、私は知らなかった。だから、実際に三冠を達成してしまったときも私にはあまり感激がなかったんです。ホームラン部門で二位の方と一本差しかなかったということもあるんですけれど、もっと完璧な三冠王をとらなくっちゃと、私はいったんですね。オレのことを褒めないのはお前だけだと、彼は言っていました(笑)。たしかにそのとおり。でもそこで満足しちゃつまらないでしょう。もっと大きな目標があるんじゃない? まだ誰もやったことのない記録を作ってみたら?―野球を知らないぶんだけ気軽に言えますから、私はいつもそういう言い方をするんですよ。まわりがみんなちやほやするから、せめて私ぐらいキツイことをいわなくっちゃ。でないと風船みたいに舞い上がっちゃうでしょ。一生懸命に足を引っ張って、地につけようとしているんですよ」

地に足をつけさせながら、さらに大きな目標設定をする。そういう形で落合家は団結しているらしいのだ。

バッターとして、日本のプロ野球史上、誰もやったことがないもの。レコードブックを見ていけば、おのずと目標は見えてくる。落合は、先にも書いたとおりプロ生活のスタートが遅いから、例えば通算安打数の記録などは目標にならない。

結論を言えば、シーズンを通して4割以上の打率を保つこと。4割を打った首位打者の初登場である。もう一つある。トリプル・トリプル・クラウンである。

過去、二度三冠王になった選手は日本では王貞治ただ一人である。アメリカのメジャーリーグでもロジャース・ホーンスピー(カージナルス、1922年、1925年)とテッド・ウィリアムス(レッドソックス、1942年、1947年)の二人だけだ。三度三冠王になる、つまりトリプル・トリプル・クラウンは今のところ一人もいない。

「それを狙っている」

落合は、そういうのだ。でも無理だと思うけどね―などといったりはしない。できる、その可能性は十分にある、というのだ。

そこまでやらないと、何かを残したことにはならないのではないか―落合はあのバッターボックスで、じつは消しようのない野望をめらめらと燃やしている。

<続く>






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注:この記事は1985年のシーズン途中に書かれたものだ。つまり二度目の三冠王に向かって邁進中に書かれたもの。このときから落合は三度の三冠王を狙っていたことを証明する貴重な記事だ。

そしてその野望はご存知のとおり、翌年達成されることになる。


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